髪色のステレオタイプとその英語表現を学んで海外ドラマ・映画をもっと楽しもう!【前編】|《言語 ✕ 文化的背景》シリーズ②

髪色にはステレオタイプがある?!
これまでの長い歴史で、「日本人は黒髪」というのは当たり前でした。しかし、まわりを見渡す限り誰もが黒髪という時代はとうの昔の話で、今ではもう茶髪や金髪だけでなくブルーやピンクなどいろいろな髪色を楽しむ人たちが増えてきました 。
そもそも、世界に誇る日本発信の漫画やアニメのキャラクターたちがとても魅力的な髪色なのですから、そんな日本にいる若者が、周囲の人の目や、暗黙の了解なんかにとらわれずに自分が好きな髪の色で人生を楽しめる時代になってきたのはとっても素晴らしいことだと思います。そんな私も、(もちろんTPOはわきまえつつですが😉)よく髪を奇抜な色に染めます。そんな私が愛用しているおすすめのヘアカラートリートメントに関する余談は、この記事の後編で ―――。
さて。みなさんは、欧米では髪色にちょっとした偏見というか、いわば固定概念のようなものがあるということを知っていますか?
あくまでも髪の色によって絶対に性格が決まってしまうということではないのですが、これまでにさまざまな要因によって髪色が特定の性格的特徴と結びつけられてきたことで、今では自然と髪の色によって決まった印象を受けるようになっているということです。
このような表現を洋画、海外ドラマ、洋書などで目にしたことはありませんか?
dumb blonde = “間抜けなブロンド”
brainy brunette = “頭脳明晰なブルネット”
fiery redhead = “燃えるような赤毛 “
ハリウッド映画や海外ドラマが大好き!という人なら、少なくとも一つめの表現は目にしたことがあるかもしれません。
ブロンドは頭が良くない、ブルネットは賢い、赤毛は気性が激しい。
こうしたレッテルは欧米社会においては偏見につながり、キャリアや私生活に影響を与えるネガティブな面もあるのですが、映画やドラマなど、メディアやエンターテインメント業界ではあくまでもジョークとして昔からよく出てきます。髪の色に対する特定のイメージは私たちが見る映画やメディアを通して目にしているというだけで、特に害のないものであることが多いのですが、私たちも欧米の人たちと接するときには気をつけなくてはいけないのは確かです。
とはいえ、ハリウッド映画で“アジア人”としてキャスティングされる俳優は黒髪であることを求められるのは当然ですし、海外ドラマや映画などでは、俳優が地毛ではなくそのキャラクターのイメージに合わせた髪色に染めて役を演じているというのはよくあることです。
というわけで、今回は欧米の髪色のステレオタイプについて深く掘り下げていこうと思います。英語学や英語表現を学習していくだけでなく、英語圏の文化背景をもより深く知ることは、実生活や海外旅行に行く際、もしくは家でNetflixやDisney+のドラマや映画を観る際にもとても役に立つと思いますので、YouTube動画などもまじえながら一緒に楽しく英語を学習していきましょう!
髪の色にまつわるイロいろ
Blonde
ブロンドヘアの人、特にブロンド女性については数多くの固定概念があります。おそらく、最も偏見が多い髪色と言えるのではないでしょうか。
ブロンドヘアは魅力的で、グラマラスな印象を受けます。最初に、セックスシンボルの先駆けである“bombshell”と称されたのは、実はマリリン・モンローではなく1933年の『爆弾の頬紅(原題:Bombshell』という映画に主演した、ジーン・ハーロウでした。セックスアピールのあるブロンド女性を表す「金髪美人(=blonde bombshell)」という言葉が彼女の存在により広まったのです。
ブロンドヘアの女性には、同様に“blonde babe”や“busty blonde”(巨乳ブロンド)などというステレオタイプもあり、勝手にセクシーだと思われがち。これがのちに、日焼けした、バストのある、青い目のブロンドというバービー人形のイメージを形成したのも事実です。
ブロンドは羨望の的でありながらも、金髪の女性は見栄っ張り、乱暴、ナイーブ、バカ といったネガティブなステレオタイプもあるのが現実で、ブロンドは知性よりも容姿に頼っているとも考えられています。また、男性はブロンド女性を他の髪色の女性よりも魅力的に感じる、という一般論もあります。これはまさに、1953年のミュージカル・コメディ映画『紳士は金髪がお好き(原題:Gentlemen Prefer Blondes)』がよく表しています。
80~90年代のハリウッド映画やドラマでも、ブロンドヘアの女性にありがちなステレオタイプは、可愛くて、間抜けで、時に意地悪で、学校や大学で大人気のチアリーダーというものが中心でした。
The “dumb blonde” is a staple of Hollywood movies.
「Dumb blonde(=間抜けなブロンド)というのはハリウッド映画の定番です。」という英文です。
この”Blonde”に対する偏ったイメージを完全に逆手にとった映画として大ヒットしたのが、『キューティ・ブロンド』(2001年)でした。リース・ウィザースプーン演じるブロンド女性のエルが主人公で、最初は “blonde bimbo”、つまり金髪美人だが知性に欠けるという印象をまわりに与えながらも、のちに懸命に努力してハーバード大学で法律の学位を取得し、周囲の人々を見返していくという痛快なストーリーです。Blonde jokesと呼ばれるブロンドに関する偏見ジョークは、もはやユーモアのひとつのジャンルとして確立しており、この映画の中にもたくさんの金髪女性に対する偏見が出てきます。
“ブロンド女性は知性がない”というステレオタイプを反映したイディオムに、 “to have a blonde moment”というものがあります。
have a blonde moment
a phrase used to mean to forget something or do something silly, which is sometimes considered offensive because it is used to suggest that women with blonde hair are not intelligent.
– Cambridge English Dictionary
つまりこの慣用句は、知性のないことをしたり、何かを忘れたりすることを意味し、それを「まるでブロンド女性みたいに一瞬だけバカなことをしてしまった」と表現しているのです。良い子のみなさんはこの表現は知っていても決して使わないようにしましょうね。
こちらは前述の映画『キューティー・ブロンド』の主人公についての、5分以内の短いまとめ動画です。まだ映画を観たことがないという方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
ここまではブロンド女性のイメージについて書きましたが、この「ブロンドは~」というステレオタイプは男性にも通ずるものがあります。一般的に金髪のステレオタイプは女性に向けられたものが多いのですが、”間抜けなブロンド男性 “の決まり文句もありますので紹介します。
dumb jock = スポーツばかりに夢中で勉強に興味がない人
surfer dude = サーファー野郎
これらの表現には直接”blonde”という言葉は入っていませんが、アメリカの映画やドラマではこういったキャラクターはたいてい金髪であり、自然とブロンドを連想させます。
こちらはWatchMojoというチャンネルの【Top 10 Dumb Blondes in Movies and TV】という動画で、男性も女性もまとめて紹介されています。
海外の映画やドラマなどでは圧倒的にブロンドのキャラクターが多いため、Blondeのイメージやステレオタイプについては私たち日本人にとってもわかりやすく、もうすでに知っていることも多かったのではないかと思います。
では、他の髪色に対するステレオタイプや偏見はどうでしょうか?実は、ブロンド以外の髪色にもちゃんとステレオタイプが存在します。ここからは、典型的なBrunette(=褐色がかった色)とRed/Ginger(赤色またはジンジャー)について詳しく解説していきたいと思います。
Brunette
ブルネットは勤勉で信頼できるというステレオタイプがあり、どんな仕事に対しても責任感が強いとされています。そのため、安定した長い関係を築くことができるとも思われています。他にも、読書家で、静かで、頭がいいなどのイメージがあります。同時に、よく本を読み、物思いにふけっているというイメージから、社交性があまりなく、容姿よりも他のことに頭が行きがち、といった偏ったイメージもあります。
この記事のはじめにも書いたように、Redheadは情熱的に、Blondeは楽しく生きているのに対して、Brunetteは学問にいそしむタイプで自分の世界に入り込むため少々とっつきにくい、といったイメージができているのです。まさにこの知的なブルネット女性のイメージを体現しているのが、『ハリーポッター』シリーズのハーマイオニーや、『美女と野獣』のベラです。
“あまり頭が良くないブロンド”とは対照的なのが“頭脳明晰なブルネット”。ブルネットの女性に対しては、頭がいい、洗練されている、真面目であるなどの固定概念があるため、時代を遡ってみても、前述の映画『紳士は金髪がお好き』では、マリリン・モンロー演じる “おっちょこちょいなブロンド “に対抗するのがブルネットの親友ドロシー・ショーであり、映画『雨に唄えば』(1953年)では、わがままであまり頭が良くないブロンドの大人気女優リナに対して、主人公は賢くて才能に溢れたブルネットのキャシーでした。
一方で、褐色がかった髪色は最も一般的な髪の色であるため、ブルネットはよくいる‘となりの家の女の子タイプ’として認識されることもあり、そのためか、地味で冴えない、つまらないといった印象もつきまとっています。色自体に関して言えば、茶色の中にはMousy brownという色があります。これは、少しグレーがかった茶色という意味なのですが、色の名前の通り、”ねずみみたいな茶色 “の髪色の女性ということで、ここでも何だか印象はあまり良くないと言えます。
Brainy brunetteについてとても詳しくまとめられている動画がありますので、興味がある方には、こちらの動画をおすすめしたいと思います。
さて。ここまで読んできて、欧米でこれまでに映画やドラマなどを通してブロンドのステレオタイプがどのように定着してきたのか、もっと深く知りたい!と思った方もいると思います。
こちらの動画は、ブロンドの文化的背景について歴史なども絡めてとても深く掘り下げています。今後の英語学習に役立てたいという方はぜひこちらの動画も見てみてくださいね♪
上の動画でも出てきますが、ハリウッド映画やTVドラマの中では、“Blonde vs Brunette” の対立関係がよく描かれます。つまり、ストーリーの中で重要な対立する2人の(特に女性の)キャラクターの髪の色がそれぞれブロンドとブルネットなのです。これはとてもよくある対立構造なので、みなさんも今後は海外ドラマや映画を観るときにはぜひ髪の色にも着目してみてくださいね。
Redheads and Gingers
ナチュラルな赤毛は、印象的で珍しいものと認識されています。
一般的に、赤毛の人は気性が激しいとされていますが、赤は愛の色とされているように、とてもロマンチックで情熱的であるとも言われます。(もちろんすべての赤毛の人に同じ特徴が見られるとは限りませんが)他にも、意見する人、魅惑的な人、反抗的な人、生意気な人といったイメージも存在しています。これまでくり返し映画化・ドラマ化されている、カナダの作家L・M・モンゴメリの作品『赤毛のアン』の主人公アンの赤毛のイメージともぴったり重なるかと思います。
赤毛の人は、その色合いからジンジャーと称されることもあります。つまり、髪色を指してジンジャーヘアーと言うだけでなく、金髪の人がBlondeとそのまま呼ばれるように、その人自体をGingerと呼ぶのです。ちなみに、昔からアイルランドの血を引いた人がジンジャーであることが多いため、西洋人で髪色がジンジャーというだけで、初対面の人にアイルランド人だと決めつけられてしまう、といったケースもあります。
そんなGingersへのステレオタイプについてまとめられた動画を最後に紹介します。
よく見聞きするブロンドのイメージとは違って、ふだん英語を勉強していて赤毛やジンジャーヘアーについてのステレオタイプについて知る機会はあまり多くないと思いますので、ぜひこちらの動画をチェックしてみてください。
ここまで髪の色とそのイメージについて解説してきましたが、映画の例を多く挙げたように、実は、人の本当の性格そのものは髪の色とはあまり関係がなく、ほとんどが社会のステレオタイプに基づいているだけだということがわかります。その‘刷り込み’がかつては映画やテレビなどを通してであったのが、昨今では私たちにとってはさらに身近なSNSやネット上のメディアを通して目にするというカタチになってきています。
だからこそ、欧米をはじめとした海外での髪色と性格のイメージに関する文化的背景やボキャブラリーを知るということは英語を学習していく上で重要なことですし、とても有益だと思います。
みなさんがNetflixなどで海外ドラマや映画を観る際に、文化的背景を深く理解した上で楽しむ事ができ、さらに国際的なコミュニケーションの場では世にはびこるステレオタイプを超えて世界中の人たちと関わっていけたら、それはとても理想的なことだと思います。
→ この記事はこのあと後編へと続きます。
ここから先は私自身の過去の体験談を含めた、完全なる余談です。私が愛用しているヴィヴィットな髪に変身できるヘアカラートリートメントについても紹介したいと思います。
この前編でいろいろな髪色について読んで興味が湧いたから髪を染めてみたいけど、でもしばらくずーっと同じ髪色になりたいわけじゃない、という人には特におすすめしたい簡単ヘアカラートリートメントですので、興味があればぜひ後編も覗いてみてくださいね。
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